夜明けの鐘 (2023・冬)

2023年01月17日 12:43


『夜明けの鐘』       

新しい年を迎えました。皆様いかがお過ごしでしょうか。牧師の縣洋一です。クリスマス「降誕祭」を中心に、御子の降誕を待ち望む「待降節(アドベント)」から、その誕生が公に知らされた「公現日」まで喜びの時を持ちました。また、今回はちょうど12月25日が日曜日という珍しい年でもありました。さて、その中で待降節では、「創造主との出会い」「慰め主との出会い」「贖い主との出会い」「和解主との出会い」、そしてクリスマス礼拝では「救い主との出会い」と、「出会い」をテーマにメッセージを語り継ぎました。

今、現代社会は「親ガチャ」という言葉(ガチャというのは、どんなものが出てくるのかわからないカプセル玩具の販売機のこと)が流行語になっているように「国ガチャ」「才能ガチャ」「病気ガチャ」と一度固定されたら、それは変えられないものだという虚無感が漂っています。しかし、カール・バルトという神学者が「キリスト教信仰は出会いの贈物である。」と語っているように、人は「プレゼントのような出会い」があれば変わっていけることを聖書から伝えたかったからです。 

そして、最悪なものからさえも「最も良いものを生み出し給う」創造主との出会いが、思い詰めて浅くなっている息を、「深く吸いこむようにして下さる」慰め主との出会いが、そして、自らの弱さ愚かさに打ちひしがれている中で、「あなたは高価で貴い」と語り掛けて下さる贖い主との出会いが、暗い溝を埋める為に「向こうから割って入ってきて下さる」和解主との出会いが、すでに与えられていることを語りました。

さて、クリスマス礼拝の中で、救い主の誕生を最初に告げられたのは、毎晩野宿をしながら夜明けを見ていた「羊飼い達」だったことを語ったのですが、そのことに関連してちょっと変わったものを持ってきてお見せしました。それが船の鐘「船鐘」です。これは、前任地の横浜の古道具屋さんで見つけた物で、さすが港町ならではの「掘り出し物」で、ちゃんと船の登録番号まで記載され実際に使われていた物です。船乗りもまた、この鐘の音で時を知らせ、特に夜の当直の人は、この鐘の音を聞きながら、夜明けの美しさを目にしてきたそういう鐘です。しかし、その鐘を見せて「はい、おしまい」とはならなかったのが面白いところ!なんと教会員の方で「元船乗り」の方がおられ、礼拝が終わるやいなや、鐘の叩き方をレクチャーして下さったのです!往年の船乗りの記憶がよみがえり、礼拝堂は、「カンカンカンカン」と、夜明けを告げる鐘の音が鳴りやまず、クリスマスにふさわしい時となりました。 

アドベントで歌う讃美歌に「見張りの人よ(236番)」という讃美歌(イザヤ書21:11~12を元に作られた)があります。旅人は見張りの人にこう問います。「見張りの人よ、夜明けはまだか、いつまで続く、この闇の夜は」。この歌詞に、昨年様々あった暗い出来事が重なります。そして、今でもウクライナでの戦闘は続いています。「いつまで続く」という暗さに埋没しそうになる私たちですが、見張りの人はこう歌い返します。「旅ゆく人よ、東の空に、あけの明星、ひかり輝く」。確かにそこにある、あけの明星を見つめつつ、暗きが終わる日を共に祈って参りましょう。