中村 哲

2020年01月12日 10:30

中村哲医師が殺された。

中村医師はアフガニスタンにて人道の立場で活動していた。活動の内容は荒れ地に水を引くことであった。それは食べ物を産み出し、飢えからの解放をもたらすためであった。

これを報じる新聞に中村医師の命が奪われたことに憤り悲しむ声が満ちていた。テレビの報道も同様であった。その画面にアフガンの大統領が中村医師の棺を先頭に立って担っているところが映し出され、国をあげて憤り悲しんでいるその思いが伝わってきた。

わたくしは、しかしこのとき、こんなことをおもった。もしかしたら、中村医師の働きが政治に利用されることになっているのではないか。

人道の立場からの働きが政治に利用されることが生じる。中村医師は政治に生じる党派から距離をとることの重要を知っておられた。中村医師はアフガンの現在の政治の体制に反対の政治党派が自分を現在の政治体制を維持する者とみなして抹殺し、それをもって自分の党派の存在を示すことになることについて、承知しておられたようだ。

中村医師はしかしその危険があるからといって自分の目の前にいる者が困窮しているとき、自分になしうることをすることをやめるという選択肢はなかった。中村医師は自分になしうることをする自分の道を歩み通した。中村哲という方はこのように生きられた方であると言ってよいのではないか。

わたくしはここで福音書に伝えられているイエスのことをおもう。イエスは自分の前にいる個人と関わった。このとき政治の党派はイエスの為すことが自分たちの党派の存続にマイナスをもたらすとしイエスを抹殺した。このたびこれと類似のことが起ったということではないか。

中村医師は自分になしうることをする道を歩み通した。この中村医師の歩みを心深く刻みたいとおもう。