土の人

2017年01月28日 09:46

 「土人」は人を差別する最悪の言葉であるが、これに「の」を入れ「土の人」とすると聖書の言っている人間のことになる。創世記2章の物語によると人間は「土」で造られている。

「土」の意味は〈もろい〉〈よわい〉。人間が土で造られているということは〈もろい〉〈よわい〉を当たり前のこととする。だが、このことを受け入れることは簡単なことではない。

キリスト教の礎石の位置にある人パウロは重い病いをかかえていた。彼の告白によると、癒されることを繰り返し祈り願った。このことは彼においても〈もろい〉〈よわい〉を当たり前のこととすることが難しかったことを物語っている。

パウロの確信するキリスト教は「人間が義と認められるのは行いによらず、神の恵みによる」。言い換えると人間は〈もろい〉〈よわい〉そのままで義とされる。

彼はこれと違ったこと言う者に対し批判を向けるのを常とした。それがあまりにも激烈であったため、彼と働きを共にする者たちは離れ去り、彼は孤立した。だが彼は、人間は〈もろい〉〈よわい〉ままで義とされる、この主張に陰りをみせることはなかった。

その彼が、である。その彼が人間は土で造られているゆえに〈もろい〉〈よわい〉を当たり前のこととする、このことを受け入れることは、自分においても難しかったと告白した。

人間は土で造られたゆえ〈もろい〉〈よわい〉当たり前のこととする、それを主張するのがキリスト教である、そう語るとき彼は、我が身の〈もろさ〉〈よわさ〉を隠すことなく、それをさらしつつ語った。

彼にそれを可能にしたのは「十字架の言」であった。それはイエスの十字架死について語る言葉であった。彼はこれを聴く中で「土」で造られていることを隠す自分が壊されてゆくのを知った。〈もろさ〉〈よわさ〉を当たり前にして生きる自分が生まれ始めているのを知った。

—————

戻る