下田洋一牧師からの、毎月のおたよりのバックナンバーをご紹介します


ももぞのだより

2019年10月06日 10:30

高校生の訴え

購読する新聞に、国連の場で「気候行動サミット」が開催され、スウェーデンの高校生のグレタ・トウンヘリさんが演説し、その演説の全文が掲載されている。 彼女は国連に集まった工業先進国の指導者たち向かってこう語った、 「人々が苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶望に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話しだけ。何ということだ。」 わたくしはこの彼女の演説文章をわたくしへの批判として読むほかなかった。というのは、わたくしは生態環境が崩壊の危機にあることを訴える文章を以前には書いていたが、近年はその訴えをしなくなっているからである。 その原

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2019年09月15日 10:30

弱 さ

鷲田清一『老いの空白』(岩波現代文庫)から教示されることが多い。今号はその一つを書いてみよう。(以下の文章は同書から教示されたところをわたくしの言い方でとなっている。) 「老いる」ということは「できる」世界から「できない」世界に入ることであると言われ、それは間違いのないところだが、人はその「できない」世界に入ったとき、分かってくることがある。それは「自由」ということについてである。 近代という時代に獲得された自由は自分のことは自分で決定できる自由、すなわち自己決定の自由、また、自分のことは自分で始末をつける自由、すなわち自己管理の自由、さらには、自分のことは自分で責任をもつ自由、すなわち自己責

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2019年08月11日 10:30

長崎市平和宣言

8月6日の広島平和記念式典、9日の長崎平和祈念式典の新聞記事を読みました。核兵器の廃絶に向けた熱い訴えを聴くことができました。今号は、長崎市長が「平和宣言」において訴えておられるところを紹介することにいたします。 長崎市長の宣言は「目を閉じて聴いてください」から始まり、ついで詩の朗読があり、そのあと熱い呼び掛けの言葉が続きます。 「原爆は『人の手』によってつくられ、『人の上』に落とされました。だからこそ『人の意志』によってなくすことができます。そして、その意志が生まれる場所は、間違いなく、私たち一人一人の心の中です。」 「今、核兵器を巡る世界情勢はとても危険な状況です。核兵器は役に立つと平然と

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2019年07月07日 10:30

民主主義

わたくしが再読する書に『当事者主権』(岩波新書)があります。そこにこういう文章があります。 「(社会の)制度設計の基準を、平均にではなく『最後のひとり』に合わせる。そのためには多数決を絶対視しない。そういう合意形成を可能にするようなラデイカルな民主主義をめざしたい。」 わたくしはこの書から多くの示唆をあたえられていますが、いま引用した文章からもあたえられました。この文章に「民主主義」の語がありますが、この文章から「民主主義」について示唆をあたえられました。今号はそれを書いてみることにします。 この文章に「ラデイカルな民主主義」という表現が用いられていますが、この言い方で民主主義の根本(ラデイカ

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2019年06月09日 10:30

創世記の洪水物語

 聖書の初めにある創世記に「洪水物語」と呼ばれている物語がある。 この物語の「洪水」は「戦争」を指している。戦争を言い表すのに洪水の比喩が用いられたのは、大災害を生じさせる洪水が戦争の生じさせる巨大な壊滅の事態を言い表す近似の表現であるからであろう。 物語は洪水が何故生じたかについて書いている。それは、当時政治を動かす権力を掌握していた者たちの勝手気ままな、横暴というほかないものによってであった。それが書かれている。 この物語の作者は、洪水という異常気象が生じて地は存続の危機に直面しているとしているが、物語の読者である私たちは、この物語表現の向こうにある、物語作者の言っているところを

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2019年05月20日 08:52

スピリチャルズ

スピリチャルズ 下田洋一   いま読書会をしている。読んでいるのは『黒人霊歌とブルース』。著者はジェームズ・コーン、アメリカで活動している黒人キリスト教神学者。 この人は次のことを述べたことで知られている。 もしイエスがアメリカに登場するとしたら、黒人として生まれてくるであろう。というのは、イエスはこの世界に登場したとき、ユダヤ人として生まれたからである、ユダヤ人は苦難の歴史を辿った、イエスは苦難のユダヤ人に自分を同一化した、 そうであるゆえ、イエスがアメリカに登場するとき、苦難を強いられている黒人として生まれてくるにちがいない。 この黒人神学者は、黒人の歌である「スピリチャルズ」(

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2019年04月30日 16:46

偏見と先入観

こんかいは購読の新聞に掲載の「ヘイトの構造」と題する、斎藤美奈子(文芸評論家)という方の文章を紹介する。 「3月15日、ニュージーランドで起きた銃乱射事件。これはどう見てもヘイトクライム。思い出したのは「ヘイト(憎悪)のピラミッド」だった。ヘイトスピーチ関係の本にはよく出てくる概念で、五層構造のピラミッドは、下から順に①偏見や先入観、②偏見や先入観に基づく行為、③差別行為、④暴力行為、一番上は⑤集団虐殺。「殺せ」「死ね」「叩(たた)き出せ」などのヘイトスピーチを放置したら、やがてヘイトクライム(暴力や虐殺)に発展するという悪夢のような構造である。 逆に言うと、一件の虐殺事件の背後には多くの暴力

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2019年03月22日 10:30

人間であること

新聞の報道を読んで気になるのは国の重要な事項に関し忖度(そんたく)で物事を決めることが続いていることである。 忖度するとは自分なりに考えて他人の気持ちをおしはかること、すなわち、忖度するとは他の人のことを配慮すること、つまり、良いことをすることである。だが、今日、忖度という言葉で言われていることは、そういう良い意味においてではない、むしろその逆である。 自分の上にいる者に気に入ってもらうために、いろいろなことを画策する。たとえば、記録を書き変える、事実を隠す、嘘を突き通す、こういったことをする言葉として使われている。人がこの意味での忖度をするとき、その人から失われるものがある。 この問題に関し

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2019年02月09日 10:30

沖縄の海

沖縄の辺野古の海に土砂が投入され、沖縄の美しい青い海が黒ずんだ色に変わってゆく、その様がテレビの画面に映し出されていた。心痛んだ。テレビ画面で見るだけで心痛むが、これを直に見ている沖縄の方々の痛みは、いかばりであろう。痛みの深さは察するにあまりある。 海が汚されるということで思い起こすのは熊本の水俣の方々のことである。企業の排出した水銀で海が汚染され、悲惨極まりないことが起こった。水俣病を強いられた方がこう言っておられるのを本で読んだことがある。それをしるしておきたい。 海は自分たちの魂が帰ってゆく所。海が汚されるということは魂が帰って行く所が汚されるということ。海が汚されれば、魂の帰ってゆく

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2019年01月11日 10:30

創世記の「箱舟物語」から

「優生思想」と呼ばれているものがあります。この思想は存在してよいものと存在してはいけないものを分け、後者を隔離し消滅させようとするものであります。 この思想を克服し無化することは、聖書を読む者の責務とおもわれますので、今号はこの思想を克服し無化する作業の一環として、聖書の語るところを書いてみることにいたします。  創世記に「箱舟物語」があります。物語は箱舟に乗船したのはノアたちと動物たちであったとしています。つまり、動物たちも乗船したとしています。そうすると、ここにはノアたち人間だけが生き残ればよいとする考えは無い、ここには動物は生き残れなくてもよいとする考えは無い、そう言ってよいかとおもわれ

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