下田洋一牧師からの、毎月のおたよりのバックナンバーをご紹介します


ももぞのだより

2020年02月09日 10:30

箱舟の中

創世記の箱舟物語によると、神は人間ノアに生きとし生けるもの七種が箱舟に入るようにせよと命じます。この「七」は「全て」を意味するので、ここで神が命じたことは生きとし生ける全ての種類、すなわち、生きとし生けるものの多様さを確保せよであります。この箱舟物語によると、さらに、 神は「清くない」もの七種が箱舟入るようにせよと命じます。この「清くない」は人間が定めた法や通念においてそうであるされたものでありますので、ここで神が人間ノアに命じたことは「清くない」と定めた人間の法や通念を全て棄てよということでした。ノアはこれを実行しました。 この箱舟の中は、生きとし生けるものの多様さがあふれ、その多様さの間に

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2020年01月12日 10:30

中村 哲

中村哲医師が殺された。 中村医師はアフガニスタンにて人道の立場で活動していた。活動の内容は荒れ地に水を引くことであった。それは食べ物を産み出し、飢えからの解放をもたらすためであった。 これを報じる新聞に中村医師の命が奪われたことに憤り悲しむ声が満ちていた。テレビの報道も同様であった。その画面にアフガンの大統領が中村医師の棺を先頭に立って担っているところが映し出され、国をあげて憤り悲しんでいるその思いが伝わってきた。 わたくしは、しかしこのとき、こんなことをおもった。もしかしたら、中村医師の働きが政治に利用されることになっているのではないか。 人道の立場からの働きが政治に利用されることが生じる。

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2019年12月08日 10:30

偶像礼拝

新聞は天皇の即位について報道。今号は「天皇」のことにふれないわけにはゆかない。そのために次の書を読んだ。赤坂憲雄『象徴天皇という物語』(岩波現代文庫)。多くを教示された。その一部を紹介する。 著者は著名な民俗学者の津田左右吉の立てた論を紹介。それをわたくしの要約で言うと、天皇は日本人の平安を祈りそのために全てを尽くすという意味で日本人の精神を支える柱、この点において日本人には合意がある(著者はこの津田の主張する合意に否を述べている。) 著者はまた著名な倫理哲学者の和辻哲郎の立てた論を紹介。それをわたくしの要約で言うと、天皇は日本人の文化伝統の永年に渡る唯一の体現者、この点において日本人には合意

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2019年11月03日 10:30

国 籍

このたび「ラクビー」というスポーツをテレビで見て、すばらしいスポーツだとおもいました。すばらしいとおもったのは、日本のチームのメンバーの31名のうち15名が日本人ではなく、多様な民族であるということにもありました。 わたくしは在日外国人の人権を守る運動に参加してきましたが、そこで問題であるとおもわせられたことは「国籍」のことであります。この国の国籍を持たない人は、この国の憲法の保障する基本的人権の外に置かれます。 この国に「国籍法」があります。そこには国籍の取得に極めて難しい条件が定められているのです。国籍を得られないでいる人たちは、基本的人権の外に放置され、苛酷な生活を余儀なくさせられている

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2019年10月06日 10:30

高校生の訴え

購読する新聞に、国連の場で「気候行動サミット」が開催され、スウェーデンの高校生のグレタ・トウンヘリさんが演説し、その演説の全文が掲載されている。 彼女は国連に集まった工業先進国の指導者たち向かってこう語った、 「人々が苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶望に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話しだけ。何ということだ。」 わたくしはこの彼女の演説文章をわたくしへの批判として読むほかなかった。というのは、わたくしは生態環境が崩壊の危機にあることを訴える文章を以前には書いていたが、近年はその訴えをしなくなっているからである。 その原

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2019年09月15日 10:30

弱 さ

鷲田清一『老いの空白』(岩波現代文庫)から教示されることが多い。今号はその一つを書いてみよう。(以下の文章は同書から教示されたところをわたくしの言い方でとなっている。) 「老いる」ということは「できる」世界から「できない」世界に入ることであると言われ、それは間違いのないところだが、人はその「できない」世界に入ったとき、分かってくることがある。それは「自由」ということについてである。 近代という時代に獲得された自由は自分のことは自分で決定できる自由、すなわち自己決定の自由、また、自分のことは自分で始末をつける自由、すなわち自己管理の自由、さらには、自分のことは自分で責任をもつ自由、すなわち自己責

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2019年08月11日 10:30

長崎市平和宣言

8月6日の広島平和記念式典、9日の長崎平和祈念式典の新聞記事を読みました。核兵器の廃絶に向けた熱い訴えを聴くことができました。今号は、長崎市長が「平和宣言」において訴えておられるところを紹介することにいたします。 長崎市長の宣言は「目を閉じて聴いてください」から始まり、ついで詩の朗読があり、そのあと熱い呼び掛けの言葉が続きます。 「原爆は『人の手』によってつくられ、『人の上』に落とされました。だからこそ『人の意志』によってなくすことができます。そして、その意志が生まれる場所は、間違いなく、私たち一人一人の心の中です。」 「今、核兵器を巡る世界情勢はとても危険な状況です。核兵器は役に立つと平然と

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2019年07月07日 10:30

民主主義

わたくしが再読する書に『当事者主権』(岩波新書)があります。そこにこういう文章があります。 「(社会の)制度設計の基準を、平均にではなく『最後のひとり』に合わせる。そのためには多数決を絶対視しない。そういう合意形成を可能にするようなラデイカルな民主主義をめざしたい。」 わたくしはこの書から多くの示唆をあたえられていますが、いま引用した文章からもあたえられました。この文章に「民主主義」の語がありますが、この文章から「民主主義」について示唆をあたえられました。今号はそれを書いてみることにします。 この文章に「ラデイカルな民主主義」という表現が用いられていますが、この言い方で民主主義の根本(ラデイカ

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2019年06月09日 10:30

創世記の洪水物語

 聖書の初めにある創世記に「洪水物語」と呼ばれている物語がある。 この物語の「洪水」は「戦争」を指している。戦争を言い表すのに洪水の比喩が用いられたのは、大災害を生じさせる洪水が戦争の生じさせる巨大な壊滅の事態を言い表す近似の表現であるからであろう。 物語は洪水が何故生じたかについて書いている。それは、当時政治を動かす権力を掌握していた者たちの勝手気ままな、横暴というほかないものによってであった。それが書かれている。 この物語の作者は、洪水という異常気象が生じて地は存続の危機に直面しているとしているが、物語の読者である私たちは、この物語表現の向こうにある、物語作者の言っているところを

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2019年05月20日 08:52

スピリチャルズ

スピリチャルズ 下田洋一   いま読書会をしている。読んでいるのは『黒人霊歌とブルース』。著者はジェームズ・コーン、アメリカで活動している黒人キリスト教神学者。 この人は次のことを述べたことで知られている。 もしイエスがアメリカに登場するとしたら、黒人として生まれてくるであろう。というのは、イエスはこの世界に登場したとき、ユダヤ人として生まれたからである、ユダヤ人は苦難の歴史を辿った、イエスは苦難のユダヤ人に自分を同一化した、 そうであるゆえ、イエスがアメリカに登場するとき、苦難を強いられている黒人として生まれてくるにちがいない。 この黒人神学者は、黒人の歌である「スピリチャルズ」(

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