下田洋一牧師のメッセージ(創世記・原初史物語を読む)を、(マルコ福音書から)に引き続き連載します。


 創世記・原初史物語を読む                  

*これから創世記の初めのところにある「原初史物語」と称されている、1章から11章の終わりまでのところにしるされている物語を読んでゆく。

*物語にはメッセージが溢れている。ここではメッセージを聴き出すことに集中したい。

*聖書の本文は「新共同訳聖書」の「創世記」を用いることとした。


それではさっそく物語に立ち入ってゆくことに。



礼拝のメッセージから

2019年10月11日 16:40

創世記五 章

1 〈アダムの系図〉   創世記5章にしるされているのは〈アダムの系図〉である。   ここで問うべきことがある。原初史物語の作者はなにゆえ〈アダムの系図〉という〈系図〉なるものを採用したのか、そしてなにゆえ〈アダムの系図〉を四章と六章の間に位置に置いたのか。   問いの後者についてはすでに述べた。原初史物語はノアから新たな歴史が始まることを物語ることをこれからのテーマとするゆえ、セトからノアへとつないでいる〈アダムの系図〉は採用するに値し、セトについて言及した四章とノアについて言及する六章の間に置いた。   ここで問いの前者について、すなわち〈アダムの系

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2019年08月14日 09:40

「創世記四章(2)」

創世記四章(2)   1 〈カインという存在〉   ここで、創世記四章のなかほどにしるされているところも丁寧に読んでおくことにしたい。   4章12 神ヤハウエはカインに言われた、「あなたは地上をさまよい、さすらう者になる。」   この「地上をさまよい、さすらう者になる」は〈土から離れる者になる〉ことを意味する。なぜカインはそうなったのか。   4章11 「あなたが流した弟の血を飲み込んだ土を耕しても、土はあなたのために作    物を産み出すことはない。」   カインがアベルを殺しその血を土に流したため、土は食べ物を産む使命を神ヤハウ

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2019年06月20日 09:08

「創世記四章―(1)」

1 〈カインとアベル〉   創世記四章は兄カインが弟アベルを殺す物語から始まる。まずそこから丁寧に読むことにしたい。   原初史物語はカインがアベルを殺すきっかけとなったことからしるしている。そこには次のようにしるされている。   4章4後半~5 「主(ヤハウエ)はアベルとその献げ物には目を留められたが、カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。」   原初史物語はカインがアベルを殺すきっかけとなったのは神ヤハウエがアベルを良しとしカインを良しとしなかったゆえであるとしている。カインはこのことのゆえに〈激しく怒った〉。カ

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2019年05月21日 16:53

「命の保全」

原初史物語は2章4後半から3三章19にしるされているところで一つの単元になっているようで、物語作者が言おうとしていることの一つは述べ終わっているようにおもわれる。これに続く3章20~24にしるされている物語は伝承されていた物語をここに加えたという感じがする。ここではこの物語を採用し加えた原初史物語の編集者の意図を推測してみたいとおもう。   わたくしの推測するところ、原初史物語の編集者が3章20~24の物語を加えた意図の一つは次のところにあるとおもわれる。   3章20 「アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。」   物語

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2019年05月21日 16:52

「その後のこと」

原初史物語の作者は〈善と悪を知る知識の木〉の実を食べた人間の〈その後のこと〉について語る。人間が〈善と悪を知る知識の木〉の実を食べたということは人間の生き方を選択したということであった。どういう生き方を選択したのか。   人が〈善と悪を知る知識の木〉の実を食べたということは、確認してきたように、これはこの世の権力を掌握している者に最高の賛辞を呈するということであるが、それは何のためであるかと言うと、この者に〈依存する〉ためであった。人はこれを自分の生き方として選択した。   人がこの生き方を選択した理由は、自分が〈土で造られている〉、すなわち自分が〈もろくよわい〉者である、

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2019年03月22日 16:33

「誘惑」

創世記2章からの原初史物語の作者は〈人間〉に集中させてこれを扱うのであるが、この物語作者が扱う〈人間〉は〈善悪を知る知識の木〉の実を食べる人間である。ここは原初史物語における最も重要なところであるとおもわれる。ここも丁寧に読んでゆこう。   3章1 「主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。『園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。』」   ここには寓話が用いられているが、蛇の開口一番の言葉はこうである、〈園にあるどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。〉この蛇の言葉は2章16~17にしるされている神が言

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2019年02月09日 09:14

「共同・共生の人間」 

原初史物語の作者は、〈エデンの園〉における人間は〈地に仕える〉人間であるとしるしたが、この人間は〈共同・共生〉に生きる存在であるとしるす。そこのところも丁寧に読んでみよう。   2章18 「主なる神は言われた。『人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。』」   ここには原初史物語作者の人間理解が言い表されている。〈人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう〉の表現からして言い得ることは、神ヤハウェによって創造された人間とは〈共同性〉〈共生性〉を持つ存在であるということである。 原初史物語作者は、人間の持つ〈共同性〉〈共生性〉について、すでにしるしてい

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2019年01月11日 16:48

「善と悪を知る知識の木」

〈善と悪を知る知識の木〉   2章15~17にしるされているところは、原初史物語における最も重要なところに関わる。ここは丁寧に読むことが求められる。   2章15 「主なる神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。」   原初史物語は語る、神ヤハウェが人間をエデンの園に置いたのは〈耕し、守る〉ためであった。   ここで〈耕し〉について留意しておきたい。この〈耕し〉について、月本昭男の『創世記Ⅰ』は適切な解釈を提示している。それを紹介する。 この「耕し」と訳すことがこれまで続いて来ているが、この語「アーバド」は「仕える」と

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2018年11月30日 13:31

「四つの川」

2章10~14には〈四つの川〉についての記述がある。この記述は物語の本筋から離れているようにみえる。が、そうであろうか。   ここにしるされていることは、エデンの園から流れ出ている川がエデンの園を潤すと共に、四つの川となって流れ出て、当時考えられ得た世界の全ての地域を潤す、それがしるされている。   古代オリエントの世界では〈川〉の水が得られる場というのは人々の生活の場である。そうすると、この〈四つの川〉の物語は、この地上の全ての世界の人々の生活の場に〈エデンの園の水〉が流れ出ており、この地上の全ての人々はこの〈水〉を介して〈エデンの園〉につながることができるということ、そ

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2018年11月30日 13:21

「エデンの園」

原初史物語はここから〈物語〉を始める。   2章8 「主なる神は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。」   物語は、神ヤハウェは人間を〈エデンの園〉に置いたと語る。その〈エデンの園〉は〈果樹農園〉であった。〈果樹農園〉は美しく描写されている。   2章9 「『見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木』が生えていた。」   この美しい描写は、神ヤハウェが人間を置いた果樹農園は〈人間が生きるに極めて良好な最上の場であった〉ということを言っているとみてよいだろう。この描写にも物語作者の編集意図があるのではないかとおもわ

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